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参加社員約9割のDX取組み意識が向上。中外流、ボトムアップの公募制のアイデア実現プログラム『DIL』。挑戦者のDXにかける想いとビジネス課題解決への期待。

こんにちは、CHUGAI DIGITALです。

中外製薬には、参加社員の約9割が「DXにおける自発的な変革意欲の向上につながった」と回答する、すべての社員が参加可能な新規アイデアの実現を支援する制度Digital Innovation Lab(DIL)があります。①社員がデジタルを活用したビジネス課題の解決や新規ビジネス創出に関するアイデアを提案し、②事務局で迅速に審査を行い、③PoC(Proof of Concept:概念実証)を進め、④本番開発を目指すプログラムです。職種や役職によらず、社員が誰でも応募することができるのが特徴です。

今回は、2021年にDILに参加し、PoCに取り組んだ3名の社員に、DIL参画によって得られた学びやDXに対する想いを聞きました。


小野 晃一(写真左)
中外製薬工業 藤枝工場製造5G 製造工程責任者
キャリアで中外製薬工業に入社。錠剤やカプセル剤の製法や作業手順の変更、逸脱時の再発防止を担当。

玉盛 明子(写真中央)
臨床開発本部 臨床プロセス戦略部 契約・文書管理推進グループマネジャー
2016年キャリア入社。臨床試験関連の生産性向上、業務削減、効率化の推進を担当 。

徳永 京子(写真右)
営業本部 流通政策部 サプライチェーンマネジメントグループマネジャー
医薬品の需要予測の立案や医薬品の安定供給に向けた流通在庫管理を担当。

Digital Innovation Lab(以下DIL)応募のきっかけ

小野:私は職場の同僚からの口コミでDILを知りました。何か新しいことをしようとすると、「実現可能性は?」「緊急性は?」と問われることが多々ありますが、DILでは実現可能性を検証するための予算やサポートを受けることができるというのは画期的だと思いました。

玉盛:抗がん剤開発に15年以上携わるなかで、医薬品が解決できるのは、患者さんをとりまく課題の一部分であると感じていました。DILは、まさに医薬品だけでは解決できない課題にアプローチできる取り組みだと思い、個人で応募しました。

徳永:私は社内で行われた説明会に参加し、DILの取り組みを知りました。「何かのきっかけになれば」という思いでグループ員に紹介し、当時グループメンバーだった一人がアイデアを出してくれました。アイデアのテーマとなった医薬品の物流在庫の移管は、長年、少数の社員が経験知をもとに行なってきました。様々な因子をもとに予測する職人技のような業務のため、「AIでどこまでできるのか?」と、最初は懐疑的な部分もありました。


医薬品の製造記録を電子化し、AIで精査 小野さんの場合

医薬品の製造現場では、グローバル品質保証水準を満たすため、日々膨大な量の記録が作成され、人の手により照査されています。中外製薬のグループ会社である中外製薬工業の小野さんは、製造グループのメンバーと、AI技術の活用により記録作成や照査の精度を高め、作業の大幅な効率化をはかる提案を行いました。

周囲を巻き込み、関係者全員で目的を共有する


小野:外部のパートナー企業や、普段関りの少ない部署のメンバーを巻き込むために、本取り組みの目的や予算、スケジュールなどを具体的に説明することが大変でした。プロジェクトを一から企画立案し、完成までのプロセスを体験することは貴重な経験になりました。通常業務との両立が大変な時期もありましたが、チームに相談し、一人で抱え込まないように心掛けました。また、企画を進めるうえで非常に重要だと感じたことは、パートナー企業とのコミュニケーションです。パートナー企業の担当者との初めてのミーティングで、「まずは今困っていることをすべて話してください。一緒に解決していきましょう。」と言ってくださり、とても心強く感じました。私たちが業務目線で出した課題を、デジタル目線で深掘ることで、どのような解決方法があるのか、解決後の姿がよりクリアにイメージできるようになりました。

作業時間の大幅なカット、期待以上の成果を目にする


小野:これまで日中に作業していた業務を夜間に自動処理することで、作業時間の大幅カットが期待できる結果でした。PoC前に設定した検証項目もすべてクリアし、うれしいのはもちろんですが、正直驚きました。内心、難しいだろうなと思いながらもチャレンジ精神でPoCに突き進んできたので。期待以上の成果を目にして、デジタルの底知れぬ可能性を感じました。

医薬品の製造現場では、高い品質を保つために制定されているGMP省令(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)を徹底遵守していますので、DXによる業務効率化は難しいものだと思っていました。しかし、今回のPoCを通じ、デジタル技術を活用することで、業務の品質を保ちつつ効率化することができるという手ごたえを感じました。高い品質を持った医薬品を製造することと、業務を効率化することは、一見、相反することのように思えますが、DXではそれが叶うと信じるようになりました。今後加速していく製造でのDXが、とても楽しみです。

DILの経験が変えた、日々の業務への取組み


小野:DILを経験することで普段の業務への意識が変わりました。今までは振られた業務の期日を守ることに重点を置いていましたが、プロジェクトの中での自身の役割や全体のスケジュール、コストをより意識するようになりました。アイデアを実務に活かすことができるDILの取り組みを通じ、今までの自分とは異なる新たな仕事の取り組み方に気づきました。

医薬品流通における在庫管理の自動化・最適化  徳永さんの場合

徳永さんは、医薬品市場の製品実績をもとに、中外製薬の医薬品の適正な流通管理を行っています。医薬品の需要予測、物流在庫の適正化業務の効率化と属人化の解消のため、AIを用いたシステム化を目指しました。

パ―トナー企業とのコミュニケーション


徳永:複数のパートナー企業とのコミュニケーションの中で、「今のデジタル技術はここまでできるんだ!」という気づきがたくさんありました。課題を解決するときの選択肢が増えたイメージです。DILでは自身のアイデアに対し複数のパートナー企業から提案を受けることができるので、各社のソリューションを自身の課題にあてはめ、自分ごと化し理解することができました。

グループ一丸となって乗り越えたPoC


徳永: PoCを行った期間は、ちょうど後発品供給不安の影響で業務が立て込んでいる時期でした。DXで業務改善を行いたいと思いつつも、私たちが最優先すべきは、医薬品の安定供給です。連日のように緊急対応が続く中、グループ員にはかなり負荷がかかっていましたが、それでもなんとかDILの取り組みに注力する時間を捻出していました。「これを乗り越えれば、大幅な業務効率化が期待できる」という当事者意識がグループ員一人一人の期待以上のパフォーマンスにつながったと思います。当時の忙しさを振り返ると、グループ員に対しては「よく頑張ってくれた」という感謝の気持ちでいっぱいです。

DILの取り組みからの気づき


徳永:どんなアイデアをあげようか、グループで考えたことで、今ある業務の棚卸を行うことができました。業務の本質に目を向け、DXで変えられるか、変える必要があるのかを考える機会になりました。 遠い存在だったデジタルが、課題解決のためのツールの一つだと捉えられるようになり、解決策の選択肢の幅が広がったように感じます。ビジネスの観点を意識することは重要ですが、アイデアが浮かんだら、誰でもチャレンジしていいんだと思える仕組みが社内にあることは挑戦する励みになります。


がん患者さんのQOL向上ソリューション

乳がん術後のリンパ浮腫の発症予防を目指したPoC 玉盛さんの場合


普段は臨床開発業務の生産性向上に従事している玉盛さん。乳がんの術後に生じることがあるリンパ浮腫を早期発見し、適切な時期の治療介入をサポートするソリューションの開発を目指し、リンパ浮腫の兆候を簡易チェックすることができるデジタルデバイス、アプリの開発を提案しました。

DILで目指した患者貢献


玉盛:私がDILで目指したことは、患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上です。患者さんをとりまく課題が、世の中にある技術を活用して解決できるなら、医薬品だけではなくサービスや環境を提供することで、その課題を1つでも多く解決したいと考えました。

価値あるデータ取得に拘ったPoC


玉盛:PoCでは、医療関係者のニーズ調査とリンパ浮腫の兆候を評価する技術開発を並行して行いました。現在の技術では目的とする精度が得られないことがわかりましたが、本PoCを次につなげるため、多くの技術検証を行いました。短期間にいくつもの検証を行い、PoCのパートナー企業のみなさんには少し無理を言ってしまったかと思う場面もありましたが、私の目指す姿に応え、PoCをサポートいただきました。本PoCの結果から、すぐに本番開発とはなりませんでしたが、医療関係者からの高いニーズと、多くの技術検証の結果を今後につなげられればと思っています。

DILの経験が変えた習慣とDXへの意識


日頃の業務で感じた課題をメモする習慣ができました。業務との向き合い方が変わったのかもしれません。目の前の必要な業務だけに意識を集中するのではなく、業務全体や、ヘルスケア業界全体の課題を自分事として考え、積極的に関り、改善していきたいと思っています。
中外製薬では、以前より社員のアイデアを募り、発言しやすい環境になっていると感じます。次にまたアイデアを出すチャンスが巡ってきたら、またチャレンジしていきたいです。DXは、誰かが進めてくれるものではなく、自分から積極的に関わっていくものだという意識に変わりました。DILに応募する前は、自分がアプリを開発するなんて思っていませんでしたが、挑戦したら、できたんです。「デジタルは自身のツールとして、誰もが活用できるもの」という気持ちが芽生え、DIL以降、デジタル関連のニュースを身近に感じるようにもなりました。


今回ご紹介したのは3名の社員によるDILのアイデア提案の経験と想いですが、2020年の開始以降これまで3回実施し、400件以上の提案がありました。そのうち50件以上がPoCを実施し、10件を超える案件の本番開発が決まっています。

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DILには、ビジネスにおける成果創出と、社員の風土改革としての成果創出の2つの目的があります。DILに取り組んだ社員の中で、エントリーを通過し、実際にパートナーと企画書を作成した社員へのアンケートでは、9割が「課題に対し自ら変革を起こしていく意欲が向上した」と回答しました。2022年も第4回のDILが進行中。今後の本番開発、成果創出を期待しています。

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