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グローバルスタンダードなシステム基盤でビジネスの変革を支える。次世代基幹業務システム(ERP)担当者が語る、ERP刷新プロジェクトの裏側とやりがい

DXの推進にともない、企業の経営資源に関する情報の適切な活用への期待が高まっています。中外製薬でも、この情報を統合し効率的な活用を推進するための基幹業務システム(ERP)の刷新と、全社的な業務プロセス改革とを同時に行うプログラム「ASPIRE」が進行しています。
本プログラムをリードし、SAPスペシャリストでもある社員にインタビュー。ASPIREでビジネスがどう変わるのか、実際にどうERP刷新を進めているのか、システム導入に携わる社員に必要なスキルセットや仕事のやりがいについて聴きました。

中村 拓(ITソリューション部ERPグループ)
学生時代の専門は都市開発。前職では物流業界でバックオフィス系のシステム開発・運用や、ERPの海外現地法人への導入に携わる。2020年9月に中外製薬へ入社。
現在はERPの経理領域を担当する。
大澤 慶一郎(ITソリューション部ERPグループ)
学生時代の専門は経済学。前職のITコンサルティングファームでは、基幹システム導入、製造業向けのシステムテンプレートの開発を担当し、2020年12月に中外製薬へ入社。
現在は在庫・購買管理及び生産計画領域を担当する。

企業におけるERPの存在意義

―ERPは企業にとってどのような役割を担っているのでしょうか。

中村:ERPは「Enterprise Resource Planning」の略語で、企業のヒト・モノ・カネ・情報といった企業資源に関する情報を一元管理し、効率的な経営に活かすことを目的としたシステムです。企業のあらゆるところに点在する情報を一か所に集めることで、情報の一貫性と即時性を確保し、より効率的かつ効果的な経営戦略の策定を可能にします。
 ERPはときに人体における背骨に例えられます。背骨は人間の体を支え、全身の様々な部位をつなぎ、体の動きを一元的に制御します。背骨が強固であればあるほど、人間の体は健康で活動的に動けます。同様に、ERPが強靭で高機能であればあるほど、企業はスムーズに業務を行い、ビジネス変革を加速することができます。 

―ERPを導入するとどのような効果が得られますか。

大澤:ERPの導入により、それぞれのシステムや業務で分断されていたデータが統合され、すべての情報のリアルタイム性が大幅に向上します。例えば、製品が購入された際には、営業、在庫、会計など関連するすべてのデータが部門を超えてリアルタイムに更新され、企業内のあらゆるデータを常に最新の状態に保つことができます。
経営に関するすべての最新のデータが一元管理されていることは、ビジネス環境の変化に迅速に対応する企業にとって、最適な決断を最速で行う上で非常に重要です。

中外製薬のビジネス変革を実現する:業務プロセスの刷新プログラム「ASPIRE」

―ASPIREとはどのようなものですか?

中村:ASPIREとは、現行のERPであるSAPを最新版のS/4HANAにアップグレードするのを契機に、中外製薬の業務プロセスを次世代向けに革新し、より効率的かつ効果的な業務遂行を可能にするプログラムの名称です。スイスのロシュ社との戦略的アライアンスに基づく独自のビジネスモデルは当社の特徴の1つであり、ロシュ・グループがもつITと中外製薬のITとの連携が、様々なシステムで進められています。ASPIREはその中でも最も規模の大きいプログラムです。

大澤:システムの観点から見ると、ロシュ・グループ内のすべての企業の情報が統合・一元化されることで、グループ間の連携が以前よりスムーズに進むようになります。現在、ロシュ社の各グループ会社では、個々に最適化された業務システムが複数存在し、これらのシステム間での情報連携が十分に行われていないため、価値あるデータが分散しています。これらの既存システムを統合することで、必要な時に必要なデータに迅速にアクセスでき、データの収集や整理にかかる時間を短縮することができます。

中村:中外製薬のシステムが全面的に刷新されるため、従来の業務フローは大きく変化します。将来のあるべき業務プロセスを作り上げるために、グローバル標準の業務プロセスフレームワークをベースに複数業務領域にまたがるプロセスをEnd to Endで俯瞰して整理しています。部分最適に陥りがちな業務を見直し、全体最適の観点であるべき業務プロセスをデザインすることで、ロシュ・グループ全体の業務を高品質なグローバルスタンダードにそろえることが可能となります。
ASPIREは単純な“大規模システム導入プロジェクト”という枠には収まりません。中外製薬が医薬品をはじめ新たな価値を創造し世界中の人々に迅速に届けるというビジネスの土台となり、デジタルトランスフォーメーションの一役を担うプログラムなのです。

―ASPIREにおけるお二人の役割を教えてください

中村:法令対応などASPIRE導入後も継続して必要なシステム機能を洗い出すため、業務部門と一緒になって現行機能の確認を実施し業務要件のとりまとめを実施しています。また、グローバルで定義されている業務プロセスの確認・現行業務との比較を行い、ASPIRE導入後のあるべき姿を業務部門と一緒になって検討しております。加えて、ASPIREに関連するプロジェクトとして、金融機関とのデータ連携経路の切替プロジェクトにも従事しており、稼働直前に業務負荷が高くならないように関連する対応を進めております。

 大澤:私の役割は、在庫・購買管理と生産計画、業務関連領域の仕様整理とデータ移行に伴うデータ品質の維持に関する取り組みをリードすることです。現在、我々の組織ではSAPと連携する周辺システムが数多く存在します。ロシュメンバーや中外製薬のチームと共に、ASPIRE導入後のシステムの最適な状態や適切なシステム選択について検討しています。
S/4HANAとのシステム連携が拡大することで共有するデータが増大し、データの品質や整合性の維持がより一層重要となります。そのため、全てのシステムで正確で一貫したデータを利用できるようマスタデータの整理やレポート要件の整理にも取り組んでいます。

―どのようなやりがいを感じていますか?

大澤:世界規模で推進するERPプロジェクトの日本チームの一員として活動することに大きなやりがいを感じています。ITシステム担当者として、このような大きなプログラムに関与できることは、自身のスキルと経験を最大限に活かせる貴重な機会であり、チャレンジングではありますが、満足感は大きいです。

 中村:これまで培われてきた業務を根本から見直す、というとても貴重なプロジェクトに携わる醍醐味があります。その貴重な機会にこれまでの自身の経験を活かせることにやりがいを感じています。また、ロシュ社のメンバーとのコラボレーションの機会があるのもとても刺激になっています。

キャリアと活躍人財

―中外製薬におけるITシステム担当者のキャリアパスについて、どのような印象を持っていますか

大澤:私が中外製薬に入社して驚いたのは、バックグラウンドに関係なく様々なことにチャレンジできる環境が整っていることです。私は前職のバックグラウンドを引き継いだ業務をこなしていくイメージでしたが、企画やインフラ担当など、本人の適性や希望に合わせた挑戦の場が用意されていることは非常に魅力的です。
 
中村:私は、社員の挑戦を後押しし尊重する風土がキャリアの可能性を広げることに大きく関係していると感じています。中外製薬では、社内複業や社内インターンなど、キャリアを自分自身で切り拓いていくことを支援する制度があります。もちろん、一つの専門性を突き詰めていき、その道のとがったプロフェッショナルとして活躍している方も多くいます。一人一人が描くキャリアの実現のためのサポートが充実しているという印象を持っています。

―最後にお二人から見た、中外製薬のERPチームで活躍するために必要なスキルやマインドセットを教えてください

中村:グローバルなメンバーとのコミュニケーションには、英語でのコミュニケーションスキルが必要です。しかし、それ以上に重要なのは、ERPの必要な知識を備えていることはもちろんですが、プロジェクトを進めていく中で必要なスキル・知識を絶えずキャッチアップしていくことです。また、業務部門、パートナー企業、コンサルタントなど、関係者は多岐にわたります。異なる立場の複数のメンバーと円滑にコミュニケーションを取り、また必要な関係者を巻き込みながら、共通の目標に向かって進むことが必要だと実感しています。

大澤:ASPIREを含む現在の中外製薬のITシステム担当者として持つべきマインドセットは、変化を楽しむことと、困難な状況に直面しても前向きに対処できることです。システム担当は中外製薬のビジネスを変革し、これまでのビジネスのやり方を大きく変えるための土台を作る仕事です。そのため、新しい挑戦を恐れず、困難を乗り越えて前進できる強い意志と柔軟性をもつ方とともにお互いのスキルを高めあっていきたいです。 

インタビュア・文    胡桃里枝子/村上雅生子(デジタル戦略推進部)


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