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未経験からデジタルプロジェクトリーダーへ 中外製薬のデジタル人財育成プログラムでリスキリングした社員3名の活躍

こんにちは、CHUGAI DIGITALです。
中外製薬では、データサイエンティストをはじめとするデジタル人財を体系的に育成する仕組みとして、「CHUGAI DIGITAL ACADEMY(以下、CDA)」*1 を2021年より開講しています。

CDAではスタッフからマネジャー層、経営層までを対象に複数のコースを提供しています。
スタッフが対象のフラッグシッププログラムとして「データサイエンティスト育成コース(DS)」と、「デジタルプロジェクトリーダーコース(DPL)」があり、この2つは同時開講で双方の受講者でチームを組み意見交換しながら進めます。デジタル基礎スキル及び専門スキルを座学で学びつつ、実際の業務を想定したプロジェクトの企画・提案・実行までを9カ月かけて行います。
今回noteでご紹介するのは「デジタルプロジェクトリーダー(DPL)育成コース」の卒業生です。
DPLとは、当社において、幅広いデジタル関連知識・経験を基に、デジタルプロジェクトを企画、管理・推進する人財として定義されています。データサイエンティストやITスペシャリスト等、他のデジタル人財と協働し、新規事業・業務効率化を目的とした様々なデジタルプロジェクトを推進・支援することが期待されます。今回、DPL育成コースを受講した3名の社員に、プログラム参加のきっかけ、得られた学び、卒業後の自身の変化、周囲や会社に与えた影響について聞きました。

(トップの写真は左から田中、谷田、福山)

デジタルプロジェクトリーダー(DPL)育成コースに参加したきっかけを教えてください。

福山:私はメディカルアフェアーズ本部という、販売促進を目的としない医学的に中立な立場から、高度な専門性を基に医療関係者との学会活動、医学的・科学的な情報交流を通じ、臨床研究/非臨床研究に関する支援を行う部門に所属しています。そこで医薬品のメディカル戦略の立案や臨床試験の実行業務を担当していたのですが、上司から「CHUGAI DIGITAL ACADEMYのDPLコースに参加してみないか」と声をかけられたのが、きっかけでした。忙しさに波がある業務なのですが、ちょうど波が落ち着き、新しいことをやってみたいと思っていたタイミングだったので、「ぜひ、やらせてほしい」と伝えました。

田中:私は薬事部という医薬品等の開発初期から販売中止まで、製薬会社が遵守すべき薬事規制に対応するための業務全般を行う部署におり、そのなかで医薬品の承認申請に関連する薬事システムを刷新する業務に携わっています。GxPと呼ばれる医薬品の適正基準を遵守した文書管理システムを開発するプロジェクトに関わることが決まっていた時期にCDAについて知り、プロジェクト推進に役立ちそうと感じ、参加を決めました。
DPL育成コースの研修期間は9カ月と長く通常業務に影響が大きいですが、上司が同じグループ内の人員配置を調整するなど後押ししてくれたので、参加しやすかったです。

谷田:私は、研究部門(現 製薬技術本部)で低中分子のプレフォーミュレーション研究に従事しています。プレフォーミュレーション研究とは、製剤研究の第一段階で、スクリーニングによって得られた候補化合物(原薬)の物性や安定性の調査や生物薬剤学的評価を行い、剤形決定といった後続の製剤化研究のアウトラインを決定する活動を指します。
以前より機械学習などのデジタル技術を活用して低分子創薬を効率化したいと考えていたので、CDAについて部門内で紹介があった時にぜひ参加したいと思いました。
CDA受講生の募集は年に3回あるのですが、第1,2期の募集は逃してしまい、第3期の募集があった時には、このチャンスを逃すものかと立候補しました。
9カ月の研修の日程は予め提示されているので、事前に自身で業務時間を調整し、負担なく受講することが出来ました。

業務上のDXの課題と、DPL受講によって得られた学びを教えてください。

田中:私は中外製薬にキャリア入社で、元々は新卒でSlerに入社、その後、他企業の情報システム部に所属していたこともあります。そのため事業会社の情報システム部門とビジネス部門の立場、ITベンダーの立場の双方がわかります。システム導入の知見も当然あったのですが、ウォーターフォール開発が主流の時代から情報がアップデートされないままの状態でした。中外のCDAでは、最新のアジャイルのプロジェクトマネジメントやヘルスケア業界特有のデジタルプロジェクトの規制、推進方法を体系的・網羅的に学ぶことができるので、これが私にとって旧来型の知識を更新する機会となりました。
また、よくある“講義で学んだ内容が理想論“といった研修内容ではなく、実際に業務に落とし込むことが出来る内容だったのは、期待以上でした。

谷田:私はこれまで、各創薬プロセスで得られた多種多様なデータが活用しきれていない状況があっても、その問題が課題として可視化されず、社内で共有されにくい状況があると感じていました。研修で「課題の見える化の手法」を学んだことにより、課題をデータで示すとともに、データで示せない場合には、関係者に丁寧にヒアリングし課題を可視化することも出来るようになりました。これにより創薬プロセスの実験の短縮を実現することができました。また、CDAのDSコース卒業生が同じプロジェクトにいます。研修で学んだチームビルディング手法を生かして彼やデータサイエンティスト、メディシナルケミストらと協力しながら今まではデジタルをうまく活用できていなかった低中分子の創薬プロジェクト変革推進を始めたところです。

福山:以前より、臨床試験のデータベースからデータを取得し、Excelで必要なデータを手動でセレクトし、パワーポイントに記載するという人海戦術の業務があることに課題を感じていました。そこで、DPLコースの課題の1つである企画提案では、Excelでやっていた情報収集・整理を自動化して統一DBに蓄積し、ダッシュボードによる可視化で作業時間の低減、ノウハウの共有・活用促進するプロジェクトを立案しました。DPL卒業式に本企画内容を紹介し、手ごたえを感じたので、そのままDigital Innovation Lab*2に応募しました。
今までプロジェクトリーダーとしてデジタルプロジェクトをリードしたことがなかったので、関係者を巻き込みながらプロジェクトを進めていく点について難しさを感じましたが、DPLの基礎スキル研修で、説得力のある企画書の書き方や、デジタルプロジェクトの進め方について学んでいたので、比較的スムーズにPoC(概念実証)を実施することができ、現在はシステム開発も終え運用フェーズに入っています。谷田さんも仰っていた通り、ヒアリングの重要性を研修で学んだので、PoC前から本番開発、運用フェーズと継続的にユーザーへヒアリングし、コンパクトでも役に立つシステムにすることを目指してきました。今後も機能拡張によりさらなる業務改善をアジャイルにて実施したいと考えています。

CDA育成プログラム(DPL向け)

受講前後で変化は感じていますか?

田中:レガシーシステム刷新時は既存システムの機能をそのまま新しいシステムで再現しようとする傾向が強く、目的としている業務効率化改善や生産性向上が十分に達成できていないという状態に陥りがちですが、講義を受けたことにより、そもそものプロセス変革を含めて現行システムの評価を行い、正しく課題を洗い出すことが出来ました。
プロジェクトメンバーにも課題の洗い出し方やアジャイル開発の意義・手法を共有したことにより、現行システムを単に新しいシステム・技術に置き換えるだけで開発完了としてしまうありがちな失敗を避けることが出来ました。

谷田:私が担当している低中分子創薬は、化合物のデザイン・合成を担当する研究者と合成された化合物を評価する研究者が共同して進めています。これまではこの進め方で成功してきたという背景もあり、新たなデジタル技術を入れる事が難しいという課題がありました。しかし、DPL受講とDXが推進されデジタル技術の重要性が浸透したことで、「良い薬を作る」という目的に向けて部横断メンバーで新しいスクラムチームを立ち上げ、アジャイルでフィジビリティスタディをスタートすることができました。また、CDAの講師から学んだスキルを日常的に使えるようになり、プロジェクトの進め方がスムーズになりました。

福山:小さいことですが、プレゼンの資料作成方法が現在の業務に活きています。受講中に作成した企画書が卒業後も継続しているプロジェクトに繋がっていて、自分が通した予算でプロジェクトを進めることが出来る面白さを感じています。

今後に向けて

福山: DPL研修後にグループマネジャーになりましたが組織の中でリーダーシップを発揮するTipsも学ぶことが出来たので、マネジャーとしてグループ員にも影響を与えていけたらと思っています。
今後さらに業務改革にデジタルプロジェクトリーダーとしてのスキルを活かし、更なるステップアップを目指し、現在運用中のシステムを部門横断利用できるようスケールしていきたいです。

田中:自分の業務に対する理想像に向けた道筋とそこに到達するためのステップを学ぶことが出来たことで、自信をもってプロジェクトメンバーにプロジェクトのプロセスや進め方を提案することが出来るようになりました。レガシーシステムのやり方に捉われていたプロジェクトメンバーにも新しい手法を共有したことにより、意味のあるシステム開発が実施できています。
現在開発している文書管理システム開発のプロジェクトが終わったら、より大規模な新しいプロジェクト開発に携わり、会社のビジネスにインパクトを与え、製薬企業として社会に貢献していきたいです。

谷田:2019年にデジタル戦略推進部ができて全社のDX戦略が加速し、「社会を変えていくぞ」という会社の本気度を感じています。DPL研修を通じて、デジタル人財育成にも会社が本気で投資しているというのを肌で感じることが出来ました。その熱量が自分の周りにも派生したことにより、今までは実現できなかった創薬プロセス改革に寄与出来たと思います。小さな成功ですが、これが会社全体の創薬効率化に寄与し、価値のある創薬創出につながると信じています。

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*1 中外製薬とALBERT、製薬業界向けデータサイエンティスト育成プログラムを共同開発~医薬特有要素を含むデータ活用スキルの習得によるDXの推進~:https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210625170001_1120.html

*2 Digital Innovation Lab(DIL)は、中外製薬のすべての社員に開かれたアイデア創出・インキュベーションの仕組みです。目先のROI(return on investment)ではなく、先進性や拡張性、将来性等の観点を重視したプロジェクトに予算・人を配分し、迅速にPoC、本番開発へと進めます。
https://note.chugai-pharm.co.jp/n/n552203957787