DX銘柄プラチナ企業が実践するマネジメント層向けDX研修コンテンツ成果!
こんにちは、CHUGAI DIGITALです。
中外製薬のデジタル人財を体系的に育成する仕組みである「CHUGAI DIGITAL ACADEMY」は、デジタルリテラシー向上や専門スキル研修など様々なコンテンツを提供してきましたが、昨年よりマネジメント層(部長・マネジャー職の社員)に特化した短期特別コンテンツを開講しました。なぜ新たに、マネジメント層向けコンテンツを企画したのか。研修の内容、受講者の変化、組織全体のDXを推進する上で必要なマネジメント層のあるべき姿について、研修担当者と受講した社員に話を聞きました。
関沢太郎/デジタルトランスフォーメーションユニットデジタル戦略推進部企画グループマネジャー
2007年、中外製薬 製薬本部に入社。製剤・医薬品分析の業務に従事。経済同友会への出向後、経営企画部にて短・中期経営計画策定やデジタルへの取り組みを推進。2019年10月より現職。主にDX戦略の立案、風土改革・人財強化・ブランディング活動に加え、各部門のDX推進支援、社外連携推進に取り組む。CHUGAI DIGITAL ACADEMYの企画運用をリードし、“デジタルプロジェクトにおける目利き向上”コンテンツ設計者。
神内達也/医薬安全性本部セイフティサイエンス部長
1998年、中外製薬 医薬安全性部門に入社。2年間のRocheの臨床安全性部門への派遣、経営企画部を経験。2021年10月より現職。
医薬安全性本部は、治験から市販後までのプロジェクト・製品の副作用安全性情報を収集・分析・評価して、副作用の機序の解明及び副作用の重篤化を回避する情報を提供する部門。セイフティサイエンス部門は収集された情報を分析・評価し、“医薬品のリスク・ベネフィット評価”を担当する機能である。業務を通じてデジタル技術を活用して医薬品の安全性を科学的に評価し、より早く効果的に医療機関及び患者さんに医薬品を届けることを目指している。
長谷川耕一/信頼性保証ユニット信頼性保証企画部長
他社製薬会社の研究職、コーポレート部門を経て2020年8月に中外製薬 信頼性保証ユニットに入社。2022年7月より現職。信頼性保証ユニットは、患者さんや医療従事者にお届けする製品や情報の品質、それらを生みだすプロセスの質の保証に責任を持つ部門。その中で信頼性保証企画部は、各本部と連携しGXPコンプライアンス活動を統括している。また、ユニットにおける部門戦略、IT・デジタル戦略の立案と実施をリードしている。
- 経営層からの要望が設計のきっかけ
関沢:CHUGAI DIGITAL ACADEMYを2021年に立ち上げ、デジタルリテラシーの向上や、データサイエンティスト、デジタルプロジェクトのビジネスリーダー等の育成に取り組んでいます。社内におけるデジタルプロジェクト提案が着実に増え、実務担当者のスキル・経験の底上げは進んでいくものの、彼らをサポートしビジネスの意思決定に責任をもつべきマネジメント層が、現場に適切なアドバイスができているのか懸念する声も上がるようになりました。そこで社内のヒアリングを進めたところ、マネジメント層側からもデジタルプロジェクトの意思決定やアドバイスに不安を抱えており、その要点を教えてほしいという要望がでてきました。これを受けて、「意思決定力=目利き力」と定義づけて、目利き力向上のための研修コンテンツの設計を決めました。
--- 1人1回2.5時間のコンテンツ
研修の設計にあたっては、2.5時間という限られた時間の中でデジタルプロジェクトを推進させるために確認すべきエッセンスを学ぶことができるコンテンツ設計をしました。設計後、設定したゴールが達成できるのかを確認するためにトライアルを実施して内容・時間のファインチューニングを行いました。その上で全社のマネジメント層全員に本コンテンツについて案内したところ、約半数の方々から受講希望があり、これまで計20回ほど開催しています。
今回は「デジタルプロジェクトにおける目利き向上:アイデア立案編」というタイトルで実施しましたが、他にもパートナー選定編、テクノロジーの勘所編等複数の研修コンテンツの開発を行っています。アイデア立案編ではアイデアの筋を見極めるという主旨で、主にゴール(課題・目指す姿)、リターン(ROI)、ソリューション(解決策)の観点でのレビューポイントを、ケーススタディを通して学習できる形式にしています。大切なことはデジタル技術を使うことではなく、業務改善や新規価値創出をいかに実現するかであり、その実現に向けて、上司の立場から適切なアドバイスや意思決定ができる状態を目指しています。
ー デジタル案件へのアドバイスに自信がない、そこを払拭したかった
神内:当社の医薬品の安全性に関する情報の分析・評価をする機能で部長を務める私にとって、組織全体の生産性を向上させ、より価値の高い安全性情報を医療関係者・患者さんに提供するためには、デジタルテクノロジーの活用は喫緊の課題であると認識しています。ITシステム導入の経験はあったので“デジタル”に抵抗はなかったのですが、部のメンバーが提案してくる新規のデジタルプロジェクトへのアドバイスには自信が持てず手探り状態でした。そんなとき、デジタル戦略推進部から今回の研修の案内があったのです。私はすぐに手上げして研修に参加しました。
今回の研修の対象者として「いまいち、デジタル案件の良し悪しがわからない」「部下へのサポート・相談に自信がもてない」人とあったので、まさに私のことだ!と感じたことも参加の決め手です。
長谷川:信頼性保証ユニットでは、2020年後半からユニット2030年構想に関する議論が始まり、トピックの一つが、デジタルテクノロジーをどのように取り込んでいくかについてでした。これを踏まえ、2021年よりユニット各部からメンバーをアサインし、ユニットデジタル戦略のグランドデザインを描き、具現化を進めるタスク活動を進めています。私は2021年よりマネジメント職を担うようになり、この一連の活動によって提案される様々なデジタルプロジェクトのアイデアのGo/No Goを決めるために必要なエッセンスを学びたいと考えていたところに今回の研修が開催されることを知り、参加しました。研修では、マネジメント層としての意識や押さえるべきポイントを学ぶことができました。これらはデジタル案件に限らず、デジタル案件以外のプロジェクトマネジメントにも活用できています。
ー デジタルプロジェクトをより良い形で進めるためのアドバイスが可能に
神内:研修を受けたことで、デジタルプロジェクトのゴールやリターンについて、より明確で合理的なアドバイスと意思決定が自信を持ってできるようになったと思います。デジタルプロジェクトの特徴とマネジャーが見るべきポイントが研修の中で整理されていたのが良かったですね。研修後にアドバイスの方法を自ら変えたことで、実際に部下と行うディスカッションの質が上がり、プロジェクトの成功につながっていくのではと感じています。
長谷川:私は基本的に部下がやりたいと提案してきたことに対して「NO」を言わない様にしています。「NO」は言わない代わりに、どんな案件でもゴールや進め方について確認し、アドバイスを心掛けていますが、デジタル案件については使用するテクノロジーが本当に最適かどうかなど、様々な疑問を持つことがありました。研修を受けることで、テクノロジーをはじめソリューションの観点でも明確にアドバイスができるようになり、目利き力を強化できたと思います。
-DX推進のキーマン、デジタル時代のマネジメント層の役割
関沢:DXを推進にあたって重要なことは、DXを全社ごと化して、社員が一丸となって取り組むことだと思います。その中でトップダウンの施策、ボトムアップの施策等様々な取り組みが生まれてきますが、そこを繋いでより高いレベルでDXを実現するためには、ミドルマネジメントの存在が重要です。ミドルマネジメントがトップと現場の両方の想い・意思を汲んでディスカッションや意思決定を行うことで、トップの意思が現場まで伝わりやすくなりますし、現場からのフィードバックがトップにも届きやすくなります。これにより、組織全体の実行力や効率性が向上し、変革や改善がスムーズに進むことが期待されます。
神内:DX推進には、異なる視点を持つパートナーが必要であり、部長やマネジャーは上司と部下というヒエラルキーありきではなく、互いに良きパートナーという新しい関係性を構築すべきです。デジタル技術の進歩は速いため、マネジャーがすべてのデジタル技術について知るのは難しいと考えています。部下から相談を受けたときに、アイデア創出やゴールの明確化につながる適切な「問い」を投げかけ、彼らがまだ知らない人脈やツールを紹介してアイデアがつながるようにフォローする。そういった役割が私たちマネジメント層に求められていると感じています。
長谷川:これだけ様々な環境が変わっている中、今までと同じ方法でずっと仕事をやり続けられると思うこと自体がリスクだと考えており、新しいことにチャレンジすることは必然というマインドを持つようにしています。デジタルの活用は今後の業務を行う上で必須であり、全員でチャレンジしなければなりません。自分が率先して新しいことにチャレンジすることもマネジャーの役割の一つで、今回、私が研修に手上げしたのもその実践の1つです。また、小さくてもいいので成功体験を部下に持たせることが重要だと考えています。そのためには行動しなければ何も体験できません。社内外の様々な事例を紹介してチャレンジを促すようにしています。一方、当社の社員に限らず、多くの人は「失敗」に対する抵抗感が強いと思います。「失敗」ではなく「上手くいかなかった」と考え、次に上手くいくために必要な要素を考え、新たなチャレンジができるように自分も行動し、部下もフォローすることで自律的なチャレンジを促していきたいと思っています。
-マネジメント層の意識変革がDXを加速させる
関沢:デジタル技術は広く現代社会に浸透しており、多くの人が日常的に触れています。組織内の役職や年齢に関係なく、デジタルに精通した人が増えており、DXへのフットワークも軽くなっています。とにかくやってみて、失敗を恐れず新しいことへチャレンジしてみる、失敗を許容してそこから学びを得る、といった前向きかつ柔軟な姿勢が求められていると思います。
神内:デジタル時代において影響する範囲が広がるにつれ、デジタル技術を導入・活用するために、プロジェクトマネジメントスキルはますます重要になっています。プログラミングやAIといった言葉にハードルを感じるようなマネジメント層でも、チームとしてプロジェクトを効果的に進める方法を学ぶことが求められています。研修を通じ、デジタル技術は今までの業務と大きな違いはなく身近な存在であり、プロセス改善や価値創造に貢献していることに気づくことができると思います。
長谷川:DXへの取り組みは今後ますます必須となってくるため、わからないからやらないとは言えない状況になっています。様々な経験をされているマネジメント層の方々だからこそ、この技術を活用する必要性をより認識されていると思います。苦手意識を持たずに、周りを巻き込みながら、新しいことへの挑戦を進めていくことが求められていると思います。
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