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ヘルスケア・イノベーションを先導する製薬データサイエンティストの成果が明らかに!最先端を体感する製薬8社主催 話題のイベント報告

こんにちは、CHUGAI DIGITAL です。
医薬品の研究開発を担う製薬企業では、サプライチェーンにおけるデータサイエンス活用のニーズが年々、高まっています。当社のみならず、国内の大手製薬企業はデジタル活用の方針を打ち出し、データサイエンス人財の採用や育成に取り組んでいます。しかし一方で、

  1. データサイエンティストやデータエンジニアなど、データサイエンスの実務を担う人財が日本全体で不足している

  2. 競争が激化するIT・デジタル人財の転職市場において、製薬企業への転職やキャリアパスのイメージが浸透していない

  3. 「製薬×データサイエンス」で何ができるのか。どのような取組みや事例があるのか。が、そもそもIT・デジタル人財に認知・理解されていない

という課題を抱えています。
そこで、同じ課題をもつ製薬企業で手を組み、データサイエンスの具体的な取組みやキャリアパスをより広く発信していこうと立ち上げたのが「製薬×データサイエンスMeetup 」というイベントです。
3回目の開催となる今年は、アステラス製薬エーザイ小野薬品工業塩野義製薬住友ファーマ武田薬品工業田辺三菱製薬中外製薬の8社からデータサイエンスやDX推進を担当するメンバーが企画し、7月29日(土)に開催しました。
Peatixにて参加を呼びかけたたところ、約1160名の皆さまにご応募いただきました。

創薬や業務プロセスの課題を業界外の方にも分かりやすく説明し、各社のデータサイエンスの取組みや技術、キャリアパス、仕事としての魅力を伝えました。


※以下に記載される発表要旨は登壇者の個人の見解を含み、必ずしも各社の公式な見解・発表ではありません。各社の医薬品に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。

発表要旨

「医薬品設計とデータサイエンス -現代の薬剤設計における最先端のデータ活用事例」
森 健一/アステラス製薬株式会社 デジタル・アナリティクス&テクノロジー デジタルリサーチソリューションズ

    創薬研究は「探索研究」と「最適化研究」の2つのフェイズに分けることができる。発表前半では、最適化研究プロセスに研究データを学習させた分子特性予測AIや実験自動化ロボットを導入することで創薬研究の加速化を達成した事例を紹介する。発表後半では、探索研究を含めた研究プロセスにおいて、拡散モデル等の生成モデルがどのように活用されているのか、また研究プロセスの将来像はどうなりえるのかについて紹介する。

「hhcecoに根ざしたデジタルバイオマーカー創出~データサイエンスによるヒューマンバイオロジーの理解とは?~」
 ​    小林千鶴/エーザイ株式会社 DHBL HBIファンデーション ヒューマンバイオロジーデータエコシステム部

 エーザイは、サイエンスとデータに基づくソリューションを創出し、他産業等との連携によるエコシステム構築を通じて、人々の「生ききる」を支える hhceco(hhc理念+エコシステム)企業への進化をめざしている。ヒューマンバイオロジーデータエコシステム部では、医薬品の研究開発・ソリューション開発におけるデータドリブンでの仮説構築を推進しているが、本内容ではDigital Health Technologyを用いたデジタルバイオマーカー開発の流れを垣間見ると共に、その期待と課題を紹介する。

「自然言語処理技術を用いたアンメットメディカルニーズの探索」
     溝上 慧祐/小野薬品工業株式会社 デジタル戦略企画部 データ戦略企画推進室 

  アンメットメディカルニーズ調査は医師面談やアンケートが一般的である。これらは、医療従事者や患者さんの生の声が取得できる一方で、時間的・費用的に高コストである。さらに、このような調査は一部の有名な疾患に集中し、疾患網羅的にアンメットメディカルニーズを取得することができない。そこで我々のチームでは、文献情報を用いてアンメットメディカルニーズを収集するモデルを構築した。本講演では、その研究概要を新入社員目線での苦労話を交えながら紹介する。

「データサイエンスとヘルスケア - SHIONOGIによるウェアラブルデバイスを用いた近未来のストレス管理」
     岩本 洋紀,田島 遼太郎,中野 紗希/塩野義製薬 データサイエンス部  

  うつ病は長期間にわたり患者様を苦しめる疾患であり、早期検出や未病段階へのアプローチが重要である。SHIONOGIデータサイエンス部では、うつ病の主な発症要因であるストレスの有無を事前に予測するアルゴリズムを開発している。開発にあたっては、社内でウェアラブルデバイスを用いた臨床研究を実施し、従業員からデータを取得した。本講演では、この事例を通じてSHIONOGIデータサイエンス部の社内外でのプレゼンスやメンバーの魅力を、入社2年目の若手メンバーより紹介する。

「Exploring Patients Drug Switching: A Deep Learning-based Approach to Extract Drug Changes and Reasons from Social Media」 
    ​Yoann M. Randriamihaja/Sumitomo Pharma America, Inc. Computational Research and Development 

​ SNSに投稿されたデータから、薬剤スイッチの潜在的な理由を抽出するためのディープラーニングを用いた方法の開発と薬剤スイッチの理由の分析結果を紹介する。
トレーニングセットと検証セットには、社内ルールに従って収集したSNSデータを使用し、Text-to-Text Transfer Transformer (T5) を用いてモデルをエバリュエートした。F1スコアとして98%, ROUGE-1スコアとして93%の精度を達成した。本結果から、我々のSNSリスニングアプローチは、患者さんの薬物治療に関する経験に対する有益な洞察を与えるものである。

「自然言語処理、MLOps/DevOps、リアルワールドデータなどを活用した内製DXの取り組み」
  坪田 匡史/武田薬品工業株式会社 JPBU データ・デジタル&テクノロジー部 

 武田薬品では、AIやデータサイエンスを活用したDXプロジェクトの内製化に取り組んでいる。内製プロジェクトにおいてはしばしば、人的リソースの不足が問題となるため、効率的な開発・運用のためのMLOps/DevOpsの実践が重要となる。本講演では、社内テキストデータの分類のための自然言語処理AIシステムや、リアルワールドデータの社内活用などの事例に基づき、MLOps/DevOpsに関連する取り組みについて紹介する。

「画像解析による薬剤作用の評価」
    ​楡井 優子/田辺三菱製薬株式会社 創薬本部 創薬基盤研究所

 First-In-Classを目指した創薬アプローチの一つとして表現型創薬に取り組んでいる。表現型創薬は、例えば化合物の作用による細胞形態変化などで薬効を判定するため、注目した表現型に重要でかつ多様な作用メカニズムの医薬品候補化合物を取得できる点が魅力である。本発表では、この表現型創薬の初期スクリーニング試験における効率化・高速化・成功確度の向上を目的とした、細胞形態変化に着目した画像解析技術の開発に取り組み事例を紹介した。深層学習モデルを用いた異常検知法による薬効判定方法を開発することで、従来の画像解析ベースの判定方法よりも多様なフェノタイプを約100倍の速度で検出できるようになったことを紹介する。

「【製薬データサイエンスの多様性】異業種出身の経験が生み出す創薬イノベーションとは!?」
​    徳山 健斗/中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部 データサイエンスグループ

 中外製薬では様々なキャリアを持つデジタルのプロフェッショナル達が全社DXに向けて共闘している。本講演では食品企業より製薬業界に飛び込んだデータサイエンティストによるAI創薬イノベーションに向けた挑戦について、リアルワールドデータ・デジタルバイオマーカー・デジタルパソロジーの3つの取り組み事例と共に紹介する。

※中外製薬のセッションは講演資料を以下に公開しております。資料の無断複製・転載・二次利用は禁止とさせていただきます。


アンケート結果、今後に向けて

アンケート回答者(200名)の9割が「イベントに満足した」「製薬企業に対する関心が高まった」と回答し、

  • データサイエンスの創薬や疾患解明に対する貢献について理解が深まった。

  • 製薬業界において各会社がどのようにデータサイエンスを活用して薬の候補の探索、新薬の開発を高速化しているのか深く理解することが出来た。

  • あまり情報が少ないデータサイエンス職に特化して各企業の取り組みについて知ることが出来、どの企業の取り組みも画期的で面白いものだった。

  • 研究内容を聞くことでデータサイエンティストの職種内容が想像しやすくなったことに加え、各企業の雰囲気もつかむことができた

  • 情報分野をはじめ幅広い分野を専攻した人たちが製薬会社で活躍していることを知れたのは就活の選択肢が広がる大きな発見であった。

といったコメントが寄せられました。
また、参加者の所属や業種もさまざまで、製薬企業以外の業種(IT企業、医療機器メーカー、製造業、大学・研究研究所など)からの参加者が7割を超えました。今後もこのようなイベントの開催ができるよう、検討していきます!

アステラス製薬、エーザイ、小野薬品、塩野義製薬、住友ファーマ、
武田薬品、田辺三菱製薬、中外製薬の事務局メンバー


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