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中外製薬DXの2年を一気に振りかえる!|事業のど真ん中でデジタルを使う。スピード感をもったDXの全社ゴト化で社外環境も変えていく(後編)

こんにちは、CHUGAI DIGITALです。

CHUGAI DIGITAL VISION 2030の達成に向けデジタル戦略推進部がリードする中で、中外社員、そして社外の環境はどう変化してきたのか。前回に続き、志済聡子(執行役員 デジタル・IT統轄部門長)、中西義人(デジタル戦略推進部長)が話し合います。

中外社員のDXに対する意識はどこまで変化した?

―経営層も現場の社員も、DXへの意識が全社的に向上しています。

中西:この2年で、社員の意識がDXに向かい、デジタルに対するスキル・経験が全体で向上していく土台は確実にできました。感覚として、アーリーアダプターとフォロワーはついてきており、これからマスや無関心層を底上げしていくフェーズになってくると思います。ただ組織風土改革や社員の意識変化といった活動は「ここで終わり」というゴールの設定が難しく、ずっとやり続ける必要があると思っています。

志済:実は、立上げの2年でここまで大きく良い方向に変わってくれるとは、思っていませんでした。デジタル戦略推進部は当初、中外製薬という大きな組織の中で、DXという何やら新しいことをする特異な組織という捉え方をされる面がありました。しかし今では、DX戦略が会社の成長戦略とイコールになり、DXが現場に浸透してきています。社員は非常に前向きですし、トップマネジメントからも強く期待されているのを感じます。

志済:もちろん最初から全てがうまくいったわけではありません。中外のCEOだった小坂さん(現・代表取締役会長)に誘われ私がIBMの執行役員から2019年に中外に移ってすぐの頃、研究本部、製薬本部、営業本部など各本部の部門長と話をしたのですが、DXで目指すべきゴールがどこにあるのか、お互いにしっくりきていないのを感じました。しかし、小坂さんはDXで何をしたいのか、はっきりした考えを持っていた。小坂さんのやりたいことは、「革新的新薬を創出する」という、非常にハードルの高いものでしたが、私はそれを正面から受け止めて部門長との対話をやり直しました。すると、すぐに賛同が得られ、各本部でもトップダウンとボトムアップの双方からDXへの動きが加速していったと感じています。

中西:ビジネスありきでDX戦略を立てたのが良かったのでしょうね。技術起点で、とにかくAIを使いたいから何かしましょうみたいなやり方をすると、手段が目的化してしまい、DXはうまくいきません。志済さんが全社員に向けて「事業のど真ん中でデジタルを使う」と言ったのは、DXで何をすべきなのか、とても分かりやすく伝わる説明だったと思います。


メディアやSNS、社外からの中外の見え方は変わったか?

―従来の風習にとらわれない積極的な社外発信に、手ごたえを感じています。

志済:当社だけでなく、あらゆる製造業でDXがバズワード化していますね。自動車業界のMaaSなどと比べると遅れていた製薬業界ですが、私たちはCHUGAI DIGITAL の取組みを積極的に社外発信しています。おかげさまで私も、中西さんも、メディアからの取材や外部セミナーで講演する機会を数多くいただけるようになっています。

中西:情報提供に関する規制や、内容が専門的で難解であることから、製薬企業の情報発信は他業種と比較して控え目だったと思います。中外製薬もCHUGAI DIGITALと言いだす前は、デジタルの活動に取り組んでいても、積極的に発信していませんでした。プレスリリースやこのnoteもそうですが、私は今ほど社外発信の力を感じていることはありません。まず知っていただき、興味を持っていただかなければ何も始まらない。社外発信が功を奏して、社外の企業からよく声をかけていただけますし、デジタル人財の採用や社内風土改革にも良い影響が出ています。

志済:社外の企業の方から、中外DXは情報の出し方がうまいとよく言われます。これまで話してきた個々のプロジェクトや、各部門から上がってくる成果を、私たちは「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」という大きなビジョンの文脈にのせて分かりやすく発信し、説明できるのが強みです。また、パートナー企業との共同リリースを行う際には、双方にとってのWIN-WINを最大化できるようにこだわっています。

中西:志済さんが中外製薬に入られる前は、当社は外から見ると、異業種の高度なデジタル人財が入社したいと思うような企業ではなかったと思います。それが今や、メディアからDX先進企業として取り上げられるようになり、DX銘柄に2年連続で選定されています。良い2年でした。デジタル戦略推進部にも中途採用で優秀なデジタル人財が応募してくれるようになり、部員は2倍以上増えてダイバシティに富んだ組織に育っています。

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国内外の医療DXの動きをどう見る?

―コロナによって計画が前倒しに。海外のデジタルヘルスの動きに注目しています。

志済:製薬企業はCOVID-19の影響をダイレクトに受けた業界の1つだと思います。ただ私たちはその前からヘルスケア産業におけるDXの重要性を認識し戦略を策定していたので、この2年の急激な変化に対して焦るということはありませんでした。元々やろうとしていたデジタルシフトが、コロナによって前倒しになったという見方をしています。

中西:GAFAのヘルスケア産業への参入や遠隔診療、DTx(デジタル治療)の動きに注目しています。GoogleのDeepMindがタンパク質の構造を解析するAIを公開し、Amazonが医薬品の流通に乗り出しAlexaで服薬管理するなど、いよいよ始まったなと。

志済:そうですね。「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」で描いた世界観が、現実味を帯びてきたと感じています。この動きの中で中外はどう外部と連携し、社会を変えるヘルスケアソリューションの提供を目指すのか。急速な外部環境の変化に合わせて考え、動いています。


中外DXの今後は?

―オープンイノベーションを促進していきたい。投資効果も示していきます。

志済:オープンイノベーションの取組みを加速させていきます。「何でも自前」主義ではなく、外部のベンチャー企業や大学・研究所の技術をリサーチして取り入れ、革新的なヘルスケアソリューションの提供につなげていきたいです。

中西:デジタル戦略推進部の役割としては、このDX推進の動きを止めないために、経営層を始めとしたステークホルダーに投資対効果を示していく必要があります。結果を見せれば投資も増える。そういう正のサイクルをまわしていくステージに入っていきます。


志済さん、中西さん。「個人」としてのチャレンジを1つあげるとしたら?

志済:「教育に飽和点はない」というIBM創業者の言葉にヒントがあると思っています。IBMは人を輩出する会社で、IBM出身者が社会のそこかしこにいます。大胆ですが、中外製薬が人を輩出する会社になったら面白い。デジタル戦略推進部をはじめ社員には、日頃からセルフブランディングを意識するようにと、言っています。これからの世の中は終身雇用ではない。同期のなかで1番になるために定年までがんばるという発想は捨てるべきです。ちょっと過激ですけど(笑)。

中西:我々の強みである「デジタル×ヘルスケアビジネス」を伸ばし、「バイオの中外」と言われるのと同じように、「デジタルの○○の中外」と言われるようなコアな技術をつくりたいです。強みを尖らせ、競争優位性を高めたい。

志済:中外に入ってきた新しい仲間が、中外ってつまらないね、となってはいけない。長い人生のなかで、中外でのあの経験が自分の中で活きたといえるように、何らかの形で人を育てられる企業になりたいですね。どんな職種にいっても、デジタルを自分のスキル・経験として入れて成長して、会社だけでなく、世の中で通用する人になってほしい。自分はそのお手伝いをしていると思っています。



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